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小児科専門:一般診療・乳児健診・予防接種 

保湿について

2014年に日本、アメリカ・イギリスから論文が発表されました。
アレルギー発症リスクの高い赤ちゃんに生後6~8か月間、保湿剤の塗布を続けるとアトピー性皮膚炎の発症を抑えることがきたことでした。残念ながら食物アレルギーの発症を抑えることまでは証明できませんでした。
アトピー性皮膚炎の発症は抑えられたので、少し長期に保湿剤を用いれば食物アレルギーの発症も予防できるのではないか、という期待が世界中に広がりました。
これが全ての赤ちゃんへの保湿剤の使用を積極的に勧めるようになっていったきっかけです。

しかし2019年から2020年にかけて、保湿剤のアトピー性皮膚炎発症予防効果、食物アレルギー発症予防効果に否定的な論文が相次いで報告されました。
2021年に発表されたイギリスの論文は、保湿をしっかり行えば行うほど食物アレルギー発症のリスクが大きくなるという内容でした。ここで用いられた保湿剤は単一ではなく、オリーブ油が最多で、日本の状況とはやや異なります。食物由来の保湿は好ましくないと思われます。

現在、賛否が二つに割れているので、湿剤使用は慎重に考えていく方がいいと思います。
塗ること自体にリスクがあり、非ステロイド軟膏や保湿剤などでも合わない人が必ずいます。
保湿はきれいに洗った手で清潔な皮膚に塗らないと、異物を体に塗り込むだけになってしまいます。

また、保湿の形状は季節で変えていくことも重要になります。
夏はローションか化粧水タイプ、冬はワセリンやクリームタイプでしっかり保湿できるもの、
秋冬はその中間の乳液タイプなどです。
夏の暑い汗をかきやすい時期にワセリンをベタベタ塗るとあせも・毛のう炎を起こします。
色々な意味で保湿は慎重に考えた方がよさそうです。

処方される保湿剤についてですが、
2017年11月ヘパリン類似物質の適正使用について厚労省が適正使用について問題提起をしました。
2017年9月健康保険組合からヘパリン類似物質処方について他の外皮用薬や抗ヒスタミン薬と同時に処方されていない場合は保健適応から除外するべき、と提案がありました。
これを受けて日本皮膚科学会などが、治療を必要とする患者に不利益を生じかねないと要望を提出しました。
イギリス、ドイツ、アメリカ、フランスでは保湿剤は保険収載されていません。
ヘパリン類似物質の作用は皮膚の血行促進や炎症を沈める作用で、海外では保湿剤として使用していないようです。
中長期的には保湿剤そのものを保健適応から外すことも検討すべきとしています。
現在のところ適正処方、適正使用ということになっている様です。
スキンケアのポイントは、①低刺激で洗う②ぬるめのお湯で入浴(清潔、血行促進、保湿剤の浸透)③油性成分配合の低刺激保湿剤を塗る、等。
処方された薬について記載はありません。

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